育児事情を紹介しながら、料理や観光の話も楽しめるオシャレな仕上がりに
日本人が、フィンランドと聞いて連想するものは何だろうか。サウナ、オーロラ、デザイン、ムーミン、サンタクロース、キシリトール、教育・・・そんな言葉のリストに新しく加わるのは「イクメン」かもしれない。フィンランド大使館のミッコ・コイヴマー報道・文化担当参事官は最近、かまくら春秋社から『フィンランド流 イクメンMIKKOの世界一しあわせな子育て』を出版した。大使館勤務の外交官が、日本で本を執筆するのは異例。4月25日に日本記者クラブで開催された出版記念イベントにはジャーナリストが30名ほど駆けつけ、矢継ぎ早に質問を投げかけていた。
安倍晋三首相はこの一週間ほど前、育児重点策を発表したばかりで、イクメン本が出版されるタイミングはよかったと言える。待機児童問題を解消するため2017年度までに40万人分の保育所を整備する決意を語り、子供が3歳になるまで育児休業を延長できるよう、企業を支援する考えも示した。これは父親も対象となるが、実際には現行の育児休暇を取得している男性社員は極めて少ない。
フィンランドでは、すべての未就学児が保育サービスを受けられる権利があり、9週間の父親休暇が保障され、子供が3歳になるまで自宅で世話をする家庭には給付金が出る。コイヴマーの自著の内容は、こうしたフィンランドの育児手当やサービスの紹介に留まらない。フィンランドにおける男女平等の歴史やイクメンを可能にする制度はもちろん、コイヴマー自身の体験や幼少時代の思い出が綴られ、読者を飽きさせない。たとえば、家庭でも男女平等を貫いた母親のエピソード。二部屋を兄妹3人で使うことになったが、母親は長男にも唯一の女の子だった妹にも一部屋を独占させることはせず、一年ごとにローテーションを組ませたという。
新著には写真がふんだんに使われ、「親子にやさしい観光スポット」や「子どもと作るフィンランド料理」といったページもあって読みやすい。おしゃれな子供服や育児グッズ、テーブルウエアの紹介は、北欧デザインやライフスタイルを好む層にもアピールしそうだ。
「フィンランドの新しい側面を伝えるために、この本を書きました。そして日本の男性が、もっと育児に関われるようエールを送りたい。子供はあっという間に成長してしまいます。それを体験できないのは、もったいないのではないでしょうか」と、コイヴマーは語る。「父親が子供の人生により深く関わることで、男性自身の生活や価値観も向上すると、心から信じています」