コンテンツへジャンプする
フィンランド外務省

フィンランド大使館・東京: 最新ニュース: お知らせ

フィンランド大使館、東京

〒106-8561東京都
港区南麻布3-5-39
電話: (03)5447-6000
E-mail: sanomat.tok@formin.fi
English | Suomi | Svenska | 日本語 |  | 
文字の大きさ 普通文字の大きさ 大
 
最近の出来事・お知らせ, 2017/05/29

遺伝子に魅せられた偉才

Photo: Aleksi Poutanen
henna_tyynismaa1
「珍しい病気に関する私たちの経験は、一般的な病気を解明するために役立つはずです」とトューニスマー

フィンランドで最も優秀な若き才能の一人であるヘンナ・トューニスマーは、ヒトゲノムの秘密を解き明かしつつあります。彼女が切りひらく最先端の研究が、個別化医療に飛躍的な進歩をもたらします。

ヘルシンキにあるバイオメディカム研究センターの5階では、革命的な成果をもたらす可能性がある何かがシャーレの中で生まれようとしています。ここでヘンナ・トューニスマー率いるチームは、進行性の下肢の硬直と痙性マヒという症状を特徴とする、疾病群の遺伝子的原因を研究しています。

 シャーレに入っているのは、リプログラミング(初期化)を行って幹細胞に変えた皮膚細胞から分化した、患者の運動ニューロンです。「運動ニューロンを使ってシャーレの中で研究する方が、患者の体を使うよりもずっと簡単でしょう!」と、トューニスマーは冗談めかして言います。彼女は遺伝学と分子神経学の研究における希望の星といえます。

 急速に進歩しつつあるこの新興分野には、医学的障害を引き起こす遺伝子的原因を研究者がピンポイントで究明できる試験法も含まれています。最終的には、個々の患者に合わせた精密な治療法の開発につながります。

  「4年前にこの研究を始めたとき、フィンランドでは未知の領域でした。私たちはその後、このような軸索の障害を引き起こす突然変異を数種類発見しています。その中には、70種類もの遺伝子が引き金になるものもあります。以前は知られていなかった遺伝子も発見しています」と、トューニスマーは言います。

個人に寄り添う医療

 トューニスマーの研究は、今日、臨床治療の世界で起こっている根本的なパラダイムシフトの一部だといえます。「次世代の遺伝子技術とDNA解読コストが低下したおかげで、病気を引き起こすメカニズムに対する理解が今後5年間に大きく前進するでしょう」とトューニスマー。現在の定期検診では万人向けのアプローチが採用されていますが、そう遠くない将来、これが一変するかもしれません。

 「将来は、特定の症状がある患者が診療所にやって来たら、従来型の高価な検査を実施する代わりにゲノム配列解析を利用するだけで、障害の原因になっている突然変異した遺伝子タイプを特定できるようになるでしょう」と、トューニスマーは予言します。これがいわゆる個別化医療であり、個々の患者特有の疾病リスクの独自性を重視したアプローチです。

 遺伝子を利用する診断法が急速に前進している一方、DNAシークエンシング(塩基配列決定法)を普通に利用して、個々の患者をターゲットとする治療を実施できるようになるまでは、まだまだ膨大な研究が必要です。

 「それでも、疾病遺伝子を一個特定するたびに、発症のメカニズムに関する理解が少しずつ進みます。これを直接治療法に採用できるわけではありませんが、私たちが助言を提供できるケースも出てきています。たとえば既存の薬を利用して、判明した発症経路をターゲットにできる場合もあります。このようなケースはまれですが、前途は有望です」と、彼女は言います。

DNAは宝の山

 トューニスマーは、フィンランドには遺伝子診断のグローバルリーダーになれる潜在能力があると確信しています。「でもこれが費用対効果の高い選択肢であることを、政策立案者に納得させる必要があります」と、彼女は課題にも触れます。

 フィンランドは遺伝子研究で先駆者の地位を確かにすることに加えて、きちんと整備されたヘルスケア制度があることも強みです。「幸いなことに、フィンランドの人々は遺伝子研究に積極的に参加してくれます」とトューニスマー。

 医療研究者にとって金鉱にも匹敵するもうひとつの強みが、フィンランド独自の「遺伝子プール」の存在です。「これは非常に限定的なものですし、フィンランドには他では見られない特殊な病気があるので、研究に最適です。フィンランド人のバイオバンクには、海外から大きな関心が寄せられています」と、彼女は言います。

Photo: Aleksi Poutanen
henna_tyynismaa2

遺伝学は運命の仕事

 静かな決意を胸に、トューニスマーは自らの分野の最前線へと着実に歩んできました。彼女は博士論文を発表して賞を獲得した後、ヘルシンキ大学で博士課程修了のリサーチフェローというポジションを得ました。その後、アカデミーリサーチフェローの在任資格も得て、同時に2つのポジションを保有するという史上初の快挙を、40歳にならないうちに成し遂げたのです。

 「高校生で生物学の試験勉強をしていたときに、遺伝学に恋したんです。研究で生計を立てている人々がいるということを知ったその日から、これこそ私の生きる道だと確信しました」と、彼女は言います。

 トューニスマーは「忍耐と、勤勉さと、フィンランドの教育制度」のおかげで成功できた、と謙遜します。また、世界で最も影響力がある遺伝学者の一人、故レーナ・ペルトネン=パロティエといった先駆者も尊敬しています。  「レーナは大勢の人々を勇気づけてくれました。フィンランドには、遺伝子研究の草創期から先頭に立って指揮をとってきた偉人がいるのです」と、彼女は語ります。

科学研究はチームワーク

 トューニスマーは、並行して行われている多数の研究プロジェクトのメンバーになっています。その中に、北欧出身の独立した若手ミトコンドリア研究者のネットワークであるミトリンクというグループもあります。

  このグループのメンバーは別々の大学に勤務しながら、基礎的な生化学から特定のヒト疾患に至るまで、ミトコンドリア生物学のさまざまな側面を研究しています。利用している研究方法とモデルシステムも、ミバエから患者の運動ニューロンまで広範囲にわたります。「今日の科学は、協力がすべてです。さまざまな種類の専門知識・技術を持ち寄ることこそ、結果を出してEUの資金を獲得するための最速の方法です」と、トューニスマーは言います。

 珍しい健康障害を引き起こす遺伝子の特定において、科学研究は目覚ましい進歩を成し遂げてきました。しかしながら世界中でありふれ、犠牲も大きい病気の背後にある遺伝子のミステリーを解き明かすには、ほど遠いのが現状です。

  「この分野でするべき研究はまだたくさんありますが、珍しい病気に関する私たちの経験は、一般的な病気の秘密を解明するのに役立つとともに、いつかはそれらを治せるようになるものと確信しています」

ヘンナ・トューニスマーの経歴

  • 分子神経学、人類遺伝学、およびミトコンドリア生物学の専門家。
  • 2007年 とくに優れた生物医学論文に授与されるヘルシンキ大学の「生物医学論文賞」を受賞。
  • 2014年~ 欧州研究会議の助成金を受給。
  • 2015年~ ヘルシンキ大学リサーチ・プログラム・ユニットのディレクターに就任。
  • 既婚、2児の母。
  • 「趣味のための時間はまったくありません。研究が面白すぎて、十分満足しています」

By Silja Kudel, ThisisFINLAND Magazine 2017


https://finland.fi/business-innovation/meet-finlands-new-gene-genie/

このページを印刷する

更新 2017/06/08


© フィンランド大使館、東京 | 本サイトについて | 連絡先