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フィンランド教育、一世紀の変遷 - フィンランド大使館・東京 : 最新ニュース

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最近の出来事・お知らせ, 2017/10/10

フィンランド教育、一世紀の変遷

Photo: Arto Wiikari
Four generations
4世代にわたるヴェサラ家の物語が、フィンランドが1917年に独立してからの教育の移り変わりを表しています。左から:ヤルモ・ヴェサラ、タイト・ヴェサラ、タトゥ・ヴェサラ、ヤリ・ヴェサラ

タイト ・ヴェサラは1926年に6歳で学校に入学しました。1年目は、秋と春に2週間ずつ巡回式の学校で勉強し、その後、国民学校の初等科に4年間通いました。彼の教育はそこで終了したのです。

「卒業証書をもらう前、私は先生の姪とクラスで成績のトップ争いをしていました。実際とても成績がよかったので、先生は私を中等科に行かせたがっていました。でも家が貧しかったので、両親を助けるため働きに出てお金を稼がなければならなかったのです」と、タイトは回想します。「だから正式な教育を受けたのはそこまでです。それ以外の勉強は、人生という学校で学びました」

1920年代、フィンランドは独立したばかりで、農業主体の貧しい国でした。タイトの一家で正式な教育を受けたのは、彼が最初でした。

タイトのひ孫であるタトゥ ・ヴェサラ(10)は、2013年に学校に入学しました。義務教育は9年間です。タトゥは現在5年生で、学校生活を楽しんでいます。彼の夢は俳優になることです。

フィンランドの学校制度の発展は、タイトの子孫の成長と重なっています。それぞれの世代が、その前の世代よりも多くの教育を受けてきました。フィンランドの教育制度は世界的に認められ、経済開発協力機構(OECD)が行っている国際的な学習到達度調査PISAやOECD加盟国による共同研究プログラムで、生徒の学力がたびたび上位に入っています。

学校を国際的に比較するのは難しいですが、フィンランドが調査で優秀な成績を収めているのにはいくつか理由があります。フィンランドでは教育が重視され、教育に対して前向きな姿勢がとられているのです。

100年間の道のり

20世紀の初頭には、地方の子どもは3分の1しか学校に通っていませんでした。1921年の「義務教育法」の目的は、国民学校のシラバスをすべての子どもに学ばせることでした。4年生を修了した後、経済力があって成績がよい子どもたちは、中等教育機関に入学を出願できました。

タイトは成績はよかったものの、この機会をつかむことができませんでした。こうして彼は就職し、警官から不動産ブローカーまで、幅広い仕事に携わってきました。息子のヤルモ・ヴェサラ(66)がたどってきた職歴も、これに似ています。ヤルモはガソリンスタンドの経営から、最近引退したばかりです。

ヤルモの教育は1956年にヘルシンキでスタートしました。彼が入学した2年後に「初等教育法」が成立し、義務教育が2年延長されました。そのためヤルモは、延長された分だけ父親よりも長く教育を受けることになりました。

フィンランドの学校制度は、1970年代にほぼ全面的に改革されました。この総合学校改革により、国民学校と中等教育機関からなる制度の時代が終了しました。代わりに9年間の総合学校制度が生まれました。総合学校は6年間の初等教育と3年間の中等教育で構成されています。

総合学校制度は、1972年から徐々にフィンランドに導入されてゆき、ちょうどその頃、ヤルモの息子ヤリ・ヴェサラ(47)が学校に入学しました。総合学校という改革は当時話題になりましたが、ヤリにとってはこの新しい学校こそが、唯一の制度でした。「私にとって、教育を受ける選択肢は総合学校だけでした」と、ヤリは話します。

無料の学校給食

Photo: Lehtikuva
Free lunch
今日では、就学前教育、総合学校(小・中学校)、そして後期中等教育学校(高校・職業学校)の生徒全員に、無料の給食が週に5日提供されています

フィンランドの学校制度が成功したカギのひとつとして、給食が挙げられます。1948年、「学校給食法」が成立しました。当時、授業は週6日制でしたが、毎日無料で給食を提供することが各自治体に義務づけられました。

「1950年代には、学校給食のサービスは今とほとんど同じ形式になっていました。みんなが一個所に集まって、一緒にお昼を食べるんです。私は家で、自分のお皿にある食べ物は全部食べなくてはならない、と教えられていました」と、タイトの息子であるヤルモは回想します。「学校で評判が悪かったメニューは、ディルが入った肉のシチューでした。全部残さずに食べられたのは、クラスで私だけだったんですよ」

歳月が経って、今はもうディルが入った肉のシチューは給食のメニューにありません。時代の変化に合わせて給食も変わり、栄養を考慮した献立になっています。学校が週5日制になった今も、毎日すべての生徒に無料の給食が提供されています。

2010年代の学校に通っているタトゥは、学校で出される食事に満足しています。「けっこう美味しいよ。ハムとジャガイモのキャセロールなんかが好き。美味しくて、気に入ってるんだ」

土木工事を請け負う仕事をしているヤリも、学校給食を称賛する一人です。「学校の給食には良い思い出があります。実は、父のヤルモと私は今、工事現場近くの学校に行って、ランチを食べているんです。値段がリーズナブルだし、健康的で本当に美味しいですね」と、ヤリは言います。「授業がある日は毎日700人の生徒にランチを提供するんだから、給食室は大変でしょうね。本当にすごいと思います」と、ヤルモもうなづきます。

点数をつけない評価方法

Photo: Arto Wiikari
Versatile learning
今の子どもたちは、数十年前には教えられていなかった教科も学んでいます。デジタル化が進み、紙の教科書も少なくなっています

タイトが学校に通っていた頃からずっと、フィンランドの学校制度では年に2回生徒の成績を評価する際、4~10という10点満点の評価法を使ってきました。「私は手堅く7を取っていました」と、ヤルモは自分の学校時代について話します。

テストと授業の実績が成績を決める基準でした。1950年代唯一の口述試験は、生徒が一人ずつクラスの前で歌うテストだけでした。

近年、成績評価システムが数字から記述式の評価に変わりました。タトゥの評価はずっと文章で綴られています。「僕は春に大事なドイツ語のテストで『A』を取ったんだけど、教室での態度は『B』。でも積極性は『A+』なんだ」と、明るく利発なタトゥは説明します。

祖父のヤルモは、タトゥの外国語の才能に感心しています。彼自身は、学校で外国語を習ったことがありません。「この子はたった10歳なのに、英語もドイツ語も話せるんですよ!」と、ヤルモは驚嘆します。

タトゥは、英語を2年生の半ばから学び始め、ドイツ語は4年生からスタートしました。新しいコアカリキュラムにより、タトゥは6年生になったらスウェーデン語も学べます。入学後の6年間で、3カ国語を学べることになります。

多様な学習

学校の基本方針は一世紀近く変わらない一方、学校制度は絶えず刷新されてきました。この四世代の物語には、それが如実に表れています。新しいコアカリキュラムは、今後数年間にわたってフィンランドの学校制度を再編する大規模な改革です。小学校には2016年秋の新学期から導入されました。

近年、さまざまな科目にまたがる幅広いテーマ別授業が教育現場で導入されています。本誌とのインタビュー当日は、旅行フェアを学校で開催したそうです。生徒たちは旅行フェアの計画を立て、準備をし、旅行の目的地と外国の文化をクラスメートに発表するのです。「今朝タトゥは、自分の体より大きい古いスーツケースを学校に持って行ったんですよ」とヤリは言いながら、スーツケースは旅行フェアの小道具として使うのだと補足します。

もう黒板はいらない

新しい学習方法は、学校の設備にも影響を与えます。教育の焦点が情報の収集からスタディスキル(学ぶために必要な学習技術)の習得に変わっているため、教室も様変わりしています。以前は生徒と黒板の間に教師の机があり、生徒は列に並べられた席に座っていました。今日、教室は間取りを変更できるオープンな空間になっています。無線で接続したコンピュータとデジタル化の導入により、教師が教壇に立って授業をする光景はもう見られません。

もはやタトゥの教室には黒板もチョークもありません。教師の机にはデジタルカメラがあり、教材は電子ボードに表示されます。また教師が自分のコンピュータを利用して動画を見せることができます。生徒も時々、タブレットやコンピュータを利用します。「色を塗ったりデッサンをするときに、タブレットで画像を見て参考にしながらやることもできるんだよ」と、タトゥは言います。

情報検索能力を身に着ける学習は、プレゼンテーションと関連づけて、2人1組やグループ単位で頻繁に行われます。

今や教科書の一部は完全に電子化されています。タトゥの兄、レーヴィ・ヴェサラ(14)は、学校からタブレットを貸与されています。これはすでに教材の多くが電子化されているためです。「今の若者は、まったく大したもんだね」と、96歳のタイトは言います。 「あんなにたくさんの情報を受け取っているんだから、彼らの能力には本当に感心するよ!」

※フィンランド大使館発行の冊子THIS IS FINLAND「100年前から100年先へ」からの抜粋

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更新 2017/10/23


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