
フィンランドのEU加盟は基本的に経済的というよりは政治的判断であり、西側の民主主義国コミュニティーに所属しようという意志の表れでした。実際、このことはEUの性質によく見合うものでした。ジャン・モネやロベール・シューマンが始めた欧州統合への動きは、常に政治的なものを目的としながらも経済的手段により発展してきたからです。EU加盟によりフィンランドが受けた経済的影響は最小限のものでした。加盟前のフィンランドが既に欧州の一部としてしっかり組み込まれていたからです。フィンランドにとって、EU加盟は長年とってきた方針の当然な成り行きの一つでした。
加盟後、明らかとなった経済的影響は、基本的に有益なものです。農業においても、加盟前に懸念された問題は発生していません。ただ、新環境に完全に移行するまで、また、共通農業政策(CAP)改革が実施される迄、最終的なことは解りません。EU加盟がもたらした最も目に見える利点は、おそらく食料品の値段が安くなったことでしょう。
とはいえ、他の北ヨーロッパの国と同様に、フィンランド人は中欧や南欧の人達に比べ、EUに対して批判的な目をもってきました。それにもかかわらず、フィンランド人は、欧州の更なる統合、EU機関の強化、そしてEU拡大を支持しています。EU組織におけるフィンランド人は、経済分野で、またEU制度の監視役として、高く評価されています。
フィンランド人にとってEU加盟を最も具体的に感じさせるものは、ユーロです。
EU自体は、フィンランドの加盟7年後の2002年まで、一般のフィンランド人にとって目に見える影響を与えるものではありませんでした。
ユーロ導入前のフィンランド通貨は「マルッカ」で、フィンランドが独立する半世紀前の1860年に制定されました。このため、長年親しんできた紙幣や硬貨をユーロに切替えることは容易なことではないと懸念されていましたが、新通貨の移行は大変スムースに実施されました。
フィンランドでは、クレジット・カード、デビット・カード、オンラインでの銀行取引などが非常に普及しているため、現金の流通量は日本などに比べると低く、出回っている紙幣や硬貨を短期間で新通貨に切替えることには問題はありませんでした。
他のユーロ導入国と同様、フィンランドでも共通貨幣導入による物価の上昇が懸念されました。5マルッカだったタブロイ紙がユーロ(約6マルッカ)になり、そんな些細なことが心配の種を大きくした感がありました。ただ、実際には全体の物価上昇はさほど大きくなかったことが2003年の統計で明らかになりました。